チェキを個人で売ろうとすると、まず「どこで売るか」で止まります。調べてもプラットフォームの公式ガイドか、個別の商品ページしか出てこないためです。
この記事では、実際に使われている4つの手段を、手数料と手間の両面で比べます。手数料は表面の料率だけ見ると判断を誤るので、1枚1,200円のチェキを10枚売った場合の手取りを実際に計算しました。
チェキの通販には、大きく4つの手段がある
1. XのDMで受けて、自分で振込を確認する
一番多い方法です。告知を投稿し、DMで注文を受け、振込を確認して発送します。
- 手数料 ゼロ(振込手数料は買い手負担にできる)
- 手間 注文の管理、入金確認、住所のやり取りをすべて手作業
- 住所 買い手の住所をDMで受け取る。自分の住所は書かなければ出ない
注文が数件なら成立しますが、10件を超えると入金の照合と発送先の管理が現実的でなくなります。「振り込んだ」と言われた人と実際の入金を突き合わせる作業が、枚数に比例して増えます。
2. BOOTH に出す
同人・創作の通販で最も使われています。チェキも多く出品されています。
- 手数料 (商品価格+送料)× 5.6% + 45円、振込手数料 200円(3万円未満)
- 手間 商品登録は必要。決済と入金は自動
- 住所 あんしんBOOTHパックを使えば匿名配送ができる
匿名配送があるのが最大の強みです。自宅住所を出したくない場合、これが使える手段は限られます。
3. STORES / BASE に出す
汎用のネットショップ作成サービスです。
- STORES(フリープラン) 決済 5.5%、振込 275円、入金1万円未満なら事務手数料 275円
- BASE(スタンダード) 決済 3.6% + 40円、サービス利用料 3%、振込 250円、2万円未満なら事務手数料 500円
- 手間 商品登録、送料設定などの初期設定が必要
- 住所 匿名配送はない。自分で発送方法を決める
BASE の「3.6%」は決済手数料だけです。サービス利用料3%が別にかかるので、料率部分は実質6.6%になります。ここを見落とすと計算が合いません。
4. チェキ専用のツールを使う
チェキだけを扱う前提のツールもあります(この記事を書いている SellPage もそのひとつです)。
- 商品サイズが決まっているので、サイズや送料の設定という画面がない
- 受注生産(注文が入ってから撮る)を前提にできる
- 「チェキに書く名前」やリクエストを、注文時に受け取れる
汎用のネットショップは「在庫のある商品を売る店」を作る道具なので、注文が入ってから撮るという形には噛み合いません。ここが専用ツールとの差です。
手数料を実質で比べる
料率だけ並べても実際の負担は分かりません。件数ごとの固定手数料と振込手数料が効くためです。
1枚1,200円のチェキを10枚売り、月末に1回振り込む場合で計算します(売上 12,000円)。
| 料率部分 | 件数固定 | 振込・事務 | 合計 | 実質 | |
|---|---|---|---|---|---|
| XのDM | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0% |
| STORES フリー | 660円 | 0円 | 275円 | 935円 | 7.8% |
| SellPage | 660円 | 0円 | 500円 | 1,160円 | 9.7% |
| BOOTH | 672円 | 450円 | 200円 | 1,322円 | 11.0% |
| BASE スタンダード | 792円 | 400円 | 750円 | 1,942円 | 16.2% |
※ 2026年8月時点の公開情報から計算。送料込み価格として計算しています。 ※ SellPage はこの記事を書いているサービスです。この条件では STORES のほうが安く出るので、 そのまま載せています。
**ただし、この表は1つの例にすぎません。**条件を変えると順番は入れ替わります。 次の2つの節で、何がそれを決めているかを見ます。
表面の料率だけ見ると間違える
同じ表を、料率だけで並べ替えると順番が変わります。
| 表面の料率 | 実質(上の計算) | |
|---|---|---|
| BASE | 3.6% | 16.2% |
| STORES | 5.5% | 7.8% |
| BOOTH | 5.6% | 11.0% |
**BASE は表面が一番安いのに、実質は一番高くなります。**理由は3つ重なっています。
- サービス利用料 3% が決済手数料とは別にかかる
- 1件あたり 40円
- 入金額が2万円未満だと事務手数料 500円
BOOTH も、料率は 5.6% ですが1件あたり45円がかかります。1,200円の商品にとって45円は 3.75% に相当します。単価が安いほど重くなる構造です。
枚数が増えると差が開く
同じ計算を、1,200円 × 50枚(売上60,000円)でやると、件数固定費の効き方が見えます。
| 合計 | 実質 | |
|---|---|---|
| STORES フリー | 3,575円 | 6.0% |
| SellPage | 3,800円 | 6.3% |
| BOOTH | 5,910円 | 9.9% |
| BASE スタンダード | 6,210円 | 10.4% |
**件数固定費があるサービスは、枚数が増えても実質の率が下がりません。**BOOTH の45円/件、BASE の40円/件が、枚数に比例して積み上がるためです。チェキは単価が安く枚数が多い商材なので、ここが効きます。
逆に、振込手数料のような1回だけの固定費は、枚数が増えるほど薄まります。
売上が小さいと順番が変わる
反対に、1回の振込が小さいときは別の固定費が効きます。STORES は入金額が1万円未満だと事務手数料 275円が加わるためです。
1,000円 × 5枚(売上 5,000円)で計算すると、こうなります。
| 合計 | 実質 | |
|---|---|---|
| BOOTH | 705円 | 14.1% |
| SellPage | 775円 | 15.5% |
| STORES フリー | 825円 | 16.5% |
| BASE スタンダード | 1,280円 | 25.6% |
**さきほどと順番が違います。**STORES と SellPage の決済料率はどちらも 5.5% で同じなので、差は固定費だけです。振込1回あたりの売上がおよそ 10,600円を下回ると、STORES の事務手数料のぶんだけ SellPage のほうが安くなります。
同じ理由で、BOOTH も枚数が少なければ有利になります。45円/件が効くのは枚数が多いときだからです。
**つまり「どこが一番安い」とは言えません。**単価と枚数、それに振込をまとめる頻度で決まります。上の2つの表は、そのうちの2点を示したものです。
住所を出さずに送れるか
チェキを売るとき、自宅住所を買い手に知られたくないという点で詰まる人が多いはずです。
方法は2つあります。
匿名配送を使う
BOOTH の「あんしんBOOTHパック」のように、プラットフォームが用意している匿名配送を使う方法です。伝票に自分の住所を書かずに送れます。確実ですが、その機能があるサービスに限られます。
差出人を書かずに普通郵便で送る
**普通郵便には伝票がありません。**差出人の記載は任意なので、封筒に活動名だけ書いて出すことができます。
ただし追跡がつきません。クリックポストやゆうパケットは追跡がつく代わりに、ラベルに差出人の住所が印字されます。追跡と匿名性はどちらかを選ぶことになります。
よくある誤解:宅配便で送れないという話
「写真に名前やメッセージを書くと信書になるので、宅配便で送れない」という話を見かけますが、これは誤りです。
総務省の指針で、写真は信書に該当しない文書として明示されています。宛名や落書きが入っても、意思表示や事実の通知を目的とした文書ではないため、信書にはなりません。サイン色紙が普通に宅配便で送られているのと同じです。
配送手段に法的な制約はありません。ネコポスでもゆうパケットでも送れます。
特定商取引法の表記は必要か
**必要です。**通信販売にあたるので、個人でも表示義務があります。
ただし、**氏名・住所・電話番号を常に掲載する必要はありません。**個人事業者がプラットフォームを介して販売する場合、「請求があったら遅滞なく開示する」旨を表示すれば足りるという運用が認められています。
pixivFANBOX が実際にこの形を採っています。
事業者の名称・連絡先
省略した記載については、電子メール等の請求により遅滞なく開示いたします。
クリエイター名
(活動名)
表に出るのは活動名だけで、事業者名・住所・電話番号は項目ごと省略し、一行の開示文言で代替しています。BOOTH や BASE もこの方式です。
注意点として、**開示請求が来たら応じる義務は残ります。**表示しなくてよいだけで、持たなくてよいわけではありません。
受注生産で売る場合は、次の2項目も特に気をつけてください。
- 引渡し時期 在庫販売と違って「いつ届くか」が不明確になりやすい。「ご注文から2週間以内に発送」のように具体的に書く
- 返品の可否 名前を書いたチェキは返品不可とする合理性がありますが、明記が必要です
どれを選ぶべきか
手数料は条件で順番が変わるので、それだけでは決められません。判断軸を分けて考えます。
| 優先すること | 向いている手段 |
|---|---|
| 匿名配送を使いたい | BOOTH |
| 手数料を抑えたい(1回の入金が1万円以上) | STORES |
| 手数料を抑えたい(1回の入金が1万円未満) | BOOTH / チェキ専用ツール |
| 数件だけ、すぐ始めたい | XのDM |
| 注文が入ってから撮りたい | チェキ専用ツール |
| 名前やリクエストを受けたい | チェキ専用ツール |
売る枚数が数件で、匿名配送も要らないなら、XのDMで始めるのが一番早いです。10件を超えるあたりから、入金確認と発送管理が手作業では回らなくなります。
住所を出したくないなら BOOTHが現実的です。匿名配送を持っているサービスは限られます。
注文が入ってから撮る形で売りたい場合は、汎用のネットショップだと噛み合いません。在庫を登録して売るモデルなので、「これから撮るもの」を売る形になっていないためです。
落書きやサインを付けると単価が上がる
最後に、価格の話です。BOOTH で「生チェキ」を検索して実際の価格を見ると、はっきりした差があります。
| 価格帯 | |
|---|---|
| 落書き・サインなし | 1,000〜1,200円 |
| 落書き・サイン付き | 1,300〜1,500円 |
+100〜300円の差が付いています。手間は増えますが、単価に反映されています。
名前やリクエストを受け取れる形にしておくと、この差を取りにいけます。逆に、そこを扱えない仕組みで売ると、価格を上げる理由を作りにくくなります。